2006年09月09日

幻の声 − 記憶に残る本9

幻の声    宇江佐(うえざ)真理 文春文庫
紫紺のつばめ
さらば深川
さんだらぼっち
「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ



これはいい!
いいわ〜!

単行本としては、「黒く塗れ」もあるがまだ読んでない。


時代劇物が好き、と言っても、まだまだ駆け出しであっちこっち拾い読みしている段階。
それでも感じたのは、女性作家と男性作家とではお話の内容の固さ?が違うということ。


誤解をおそれずに大きく分けちゃうと、

男性作家は、立会いの描写とか、刀に始まる武器の描写が結構緻密ということ。
剣の流派も始祖からどうやって分岐してきたのか、名だたる剣豪にどういう人がいるか等詳しく書いてある。

女性作家は、剣戟も出てくるけど割とそこら辺はさらっと流して、登場人物の心の動きを描写する事が多いような気がする。

私はどちらも好き。


で、宇江佐真理さんだが、
この人の作品は本屋で時代物が読みたいなぁ〜と物色していて、ふと手に取ったもの。
申し訳ないことにそれまでこの作家さんの事は知らなかった^^;

最初手に取った時、裏表紙の内容を読んで、
「よくある人情物かぁ」
「主人公が髪結いの”お手先”かぁ。親分とかじゃないから、板ばさみになったりで細々(こまごま)とした人情話ばっかりかなぁ」← 偏見
とかなり乗り気薄。

でも
「選考委員満場一致でオールよみ物新人賞を受賞!」
って書いてあったのと、表紙の絵に何か感じるものがあって、少なくともはずれはないべ、と購入決定!
(表紙って結構内容の雰囲気を表すよね)


・・・

いやーーーー!
良かった!
読む気になって!
えらい、私!


あのね、作者の名前を知らずに読んだら、男性作家かな?と思うかもしれない。
いや、剣さばきとかは出てこないし、剣豪とも縁がない。
だけど、地文とか台詞回しとかが、なんとなく女臭くない。

ところがそう思って読んでいると、ふとした情景や小物で、ふっと心に思い浮かべる事柄の描写がとても繊細。
小気味良い文体なんだけど、文に表してない事柄がすっと心に入ってくるような匂いが紙面から立ち上る。(おぉ文学的!  ぉぃ

結局、女性ならではの感性、ってことなんだろうけど、今までに読んだ女性作家、男性作家の文体とも雰囲気とも違うんだなぁ。



時代劇物(江戸時代)がお好きなら
家宝である!
(記憶に残る本シリーズじゃなくて、家宝シリーズにすればいかった・・・)


一番の特徴は
しゃべり言葉!


私がまだ不勉強なだけなんだと思うけど、はるかな昔に劇とかでは耳にした記憶がかすかにあるが、今までに他で「読んだ」事のないしゃべり口調。

例えば・・・
主人公(の一人)である深川芸者、文吉が自分を指して言うのが
「わっち」
お互いを指して言うのが
「お前ェ」

”おまぇ”、と発音するのか、”おめぇ”と発音するのか、うっかりと読み逃しているけど、私は”おめぇ”として読んでいる。


もっといい例があると思うんだけど、今さっき読み直した箇所なので印象に残っている言葉使いの例。

「わっちは甘かった。」「わっちは所詮、売り物、買い物の芸者さね。客の機嫌を損ねていい訳がねェ。若竹じゃ、もうお呼びが掛からねェだろう。仕方がない。」

文吉の台詞じゃないけど
「嫌やだ。垢だらけね。いっそ恥ずかしい。」

文吉(本名お文)がある場面で啖呵を切る場面がある。
それを聞いていた御用聞きの親分の別の手下とのやり取り。

「わっちは芸者だ。客に愛想を振り撒いて銭を引っ張ることだってありますよ。(略」
お文がそう言うと、座敷の隅で話を聞いていた正吉が「よ!」と掛け声をいれて掌を打った。
「文吉姐さん、いっちすてき」


この後掛け合いがあって、最後に又この手下が
「きゃあ、姐さん、芝居の心中もののような台詞だ。乙にすてき、すてき」

まぁ、この手下は合いの手を入れるたびに親分から「なんだその言い草は!」ってな感じで頭をはたかれるのだが・・・^^;

ね?
ちょっと聞きなれない言葉使いでしょ? (私だけか・・・?


”いっち”って言い回しは、このシリーズの中ではよく出てきて、
どうも「一等好き!」とかの一等とか一番ってのと同じ意味合いと読める。
(まー最近あんまし「いっとう」って言い方も聞かないけどね・・・)

なんかこの手下のはやし言葉がね、私にはツボにはまったのよ^^;
「よっ!いっち素敵!」
「乙にすてき、すてき!」

使いたいなぁ・・・どこかで♪


それから、登場人物達が出来すぎてない。
しくじりも不人情な場面も出てくるし、他人に対して本気で癇癪を起こす場面もある。
最初は「ぎょっ」としたけど、読んでいるうちに登場人物達が隣に座って会話しているような気になってくる。


それから今まで読んだところだと、「24hours」までは行かないが、展開が早い。
他の作品でも、主人公を取り巻く環境・条件が長いシリーズの中で変わっていくけど、大体何冊かおいてちょっとづつ環境が変わるじゃない?
その間は手を変え品を変えて事件が起こり、それを解決していくって感じだけど、これはなんか一話読むたびに主人公達の身の周りが変わっていくような印象を持つ。

それが又リアル。

そうだよなー。
人間は日々生きて感じてるんだもんなー。

って実感する。
だから、お文はどうするんだ?伊三次はどうするの?って、もう早く次が読みたい、読みたいってなもので。

もちろん他の作品のように、逆に”この状態を変えないで〜”、”主人公に年を取らせないで〜!”、”いつまでもこの人達のやり取りを読んでいきたいのー!”って思う作品もあるけどね^^

ただ、作者さんはこのシリーズだけはどうしても止めろって言われるまでは、ずっと書き続けていきたいって言っているそうなので、この先はゆっくりになるのかもしれない^^
それも又よし!
ゆっくり楽しめるじゃな〜い♪
(・・・もしかして何世代にも渡る大河小説に・・・な訳はないか。)


読んだり聞いたりするとすぐに影響を受けるので、しばらくは日常会話の中に江戸言葉が出そうな、わっちでした。
(相方に「おめぇ」って言ったら怒られるだろうなぁ)



ラベル: 記憶に残る本
posted by 葉山猫 at 01:48| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 活字 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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